里山で美しく生きる。

ボトルに詰めた芽室の景観

2018.1.12

ワインを嗜むようになってから、「テロワール(terroir)」という言葉があることに気づきました。狭義にはワイン生産における特有の概念で、ブドウの生育環境の土壌、気候、自然と人の相互作用などを指しています。日本語では、哲学者・和辻哲郎の著書名でもある「風土」が近い意味でしょう。テロワールの構成要素の一つに景観がありますが、芽室町の農村景観と言えば、防風林が真っ先に浮かびます。町内の総延長は約408km。大学院で十勝の防風林景観の経済価値を研究した際、CVM(仮想市場評価法)の手法を用いて分析した結果、推計総額が893億円となりました。十勝管内総延長の3,605kmを基準にすると、芽室町には約101億円の価値が存在することになります。同じ“仮想”でも仮想通貨のBitcoinのように実際に取引され、キャピタル・ゲインができるわけではないので実感が湧かないのですが、貨幣尺度で表現すると価値の大きさが僅かに理解できます。MEMUROワインヴァレー研究会が2016年の視察で訪問したボルドーのサン・テミリオン地域は、世界遺産に登録され、地理的表示の一つであるAOC(原産地統制呼称)に依拠してワイン用ブドウ畑の景観保全をしています。保全対象はブドウ畑、杭のアカシアとそれ自体の植生、土留め壁の材料、屋根瓦など多岐にわたるもの。これからの芽室町の農村景観に、カラマツの防風林に間伐カラマツ材の杭が並ぶブドウ畑が加わることを想像します。芽室のテロワールがワイン・ボトルにしっかりと閉じ込められ、世界に伍して戦うための強みとなることを夢見ています。

この記事を書いたのは…
梅澤 弘一